ここねの視線が、棚の隅にある小さな箱で止まった。
そこに貼られていたラベルには、柔らかい文字でこう書かれていた。
——《こころカプセル》
“未来の自分へ、魔法をこめた手紙を。”
「……これも、自分に使ってあげよう」
そっと、でも少し震える手で箱を取り、蓋を開けると……ふわりと甘い香りがやさしく広がった。
小さなカプセルの中には、メッセージカードと、金色のペン。
未来の自分宛てに、言葉を残す──。
気がつけば、つぼみえんぴつを持ったここねの指は動いていた。
「いまのわたしへ
たくさん迷って、たくさん泣いて、それでも逃げなかったね。
誰かを元気にしようとして、自分がボロボロになる日もあった。
それでも、やさしさを届けることをやめなかった。
だから——
未来のわたしも、どうか信じて。
あなたならきっと、大丈夫だよ」
書き終えた瞬間、胸の奥にあたたかいものがじわっと広がった。
メッセージカードをカプセルにそっとしまって、ぎゅっと両手で包む。
そうか。わたしがずっと誰かに言いたかった言葉って、
本当は、自分自身に向けたものだったのかもしれない。
まだ不安はある。さみしさもある。
でも、それ以上に──
あの日の自分が書いた言葉が、
今の自分を、未来の自分を、そっと抱きしめてくれている気がした。


