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14日目、閉店前のパレット。
騒ぐ文具たちを片付けていると、扉が軋む音とともに、懐かしい声が店内にふわりと響いた。
「あ、すみません今日はもうおしまいで、」
「ただいま、ここねちゃん!」
「あっ……!」
振り返ると、懐かしい声とともに、店長が立っていた。
少し日に焼けたような笑顔。
そして大きなスーツケース。
あの日と同じエプロン姿だけど、なんだかちょっと頼もしくなって帰ってきた気がした。
「店長っ……!」
思わず駆け寄って、ぱっと笑う。
胸の奥がじんわり熱くなり、涙がこぼれそうだったけど、必死に笑顔を保った。
「ここねちゃん、ほんとにありがとう。店番、ちゃんとできてた?」
「はいっ……すっごく、いろいろあったけど、全部、大事なことだった気がします」
「そっか」
店長はにっこりとうなずいた。
この2週間は、まるで一瞬の夢のようで、同時に一生のようにも感じた。
「このお店を、“誰かに託す”って、実はちょっとこわかった。でも……帰ってきてすぐ分かったよ。ここねちゃんにお願いして、本当によかったって」
言葉より先に、心の奥がじんわりあたたかくなった。
「たぶんわたし、パレットに来なかったら、自分のことずっと嫌いなままだったかも……」
「でも今は?」
「……自分のことが好きって言えるかも!」
「それで十分」
店長の手が、そっと髪を撫でる。その温もりはまるで、心にそっと魔法をかけるようだった。



