この前から、みのりちゃんに本当に必要な文房具はなんだろう?とずっと考えていた。
棚の文房具たちをひとつひとつ見つめながら、わたしは1つの文房具を持ってきた。


「もっと前向きに!」とか「がんばろう!」って押しつけるんじゃなくて。
むしろ、いまは……溜め込んだ気持ちを吐き出せる場所が必要なんじゃないかな。


そこで、ふと目に入ったのが、手のひらにすっぽり収まる、小さなノート。
表紙は淡いミントグリーンやピンク、ラベンダー色のパステルカラーで、まるで春の雲みたいに柔らかそうだった。


『ぱっちんノート』


ページのすみには、カラフルな切り取り線が入っていて、どのページも、思い切りビリッと破れる仕様。


タグにはこう書かれていた。


『嫌な気持ちはためこまない! 書いて、破って、パーン!って捨てちゃえ!』





「みのりちゃん。リベンジさせてほしいの。……これ、使ってみて」

「ぱっちんノート……?」

「思いっきりグチでも、泣きごとでも、なんでも書いてね。誰にも見せなくていいから。
書いて、破って、ポイってして、その分だけ、心が軽くなるよ。」

「心が、軽くなる……?」





みのりちゃんは怪訝そうな顔をしながらも、ノートを開いて、真剣な顔で鉛筆を走らせた。


ギュッ、ギュッ、と強い筆圧。
文字じゃない、ただのぐしゃぐしゃの線にしか見えないところもある。
でも、それでも、彼女はひたすら書いていた。