みんなが帰ったあと、静かになった店内。
夕暮れの光が、木の床に優しく伸びている。
ここねはそっと、レジ横の棚からノートを取り出した。
——自分で作った、“ふりかえりメモ”。
今日一日、今まで来てくれたお客さんと会い、いろんなことを思い出した。
ノートのページを、改めてめくる。
・今日できたこと
・失敗しちゃったこと
・うれしかったこと
・魔法、届いたかな
「……最初、めっちゃ緊張してたんだよね」
ページをめくると、慣れない接客であたふたしていた日、ペンの喧嘩に巻き込まれて泣きそうになった日。
ひとつひとつが、少し笑えるような、でも確かに“頑張っていた日々”。
途中のページには、ちょっとだけ迷っている自分も書いてあった。
『わたしって、誰かを助けられてるのかな。
魔法が、本当に届いてるのか分かんなくなる。』
その下に、小さく書かれている。
『でも、あの子の笑顔が見れたから、たぶん、大丈夫。』
その一文を見たとき、胸がじん、と熱くなる。
「……わたし、ちゃんとやってきたんだ」
泣きたくなった時も、逃げたくなった日も、
誰かに“届けよう”って思って作った魔法文具たち。
渡した子たちが笑ってくれた顔が、心に浮かぶ。
そして、ふと思った。
——このメモだって、わたしの魔法だったのかもしれない。
不安な気持ちを書いて、できたことを確認して、
ほんの少しだけでも「今日のわたし」を好きになれる魔法。
最後のページは、店長のメモ。
小さな付箋に、走り書きの字で。
『ここねちゃんなら、大丈夫。信じてるよ。』
「……そっか。わたし、こんなにもたくさんの人と出会って、こんなにもいろんな気持ちをもらって……」
ページを閉じて、胸にぎゅっと手を当てた。


