チリンチリン——!
昨日のここねのときより、勢いよく開いた扉。
「すみませぇぇぇん!!文房具で、人生救われたいんスけどぉぉ!!」
夕焼けに染まる店の中に、爆音ボイスと共に飛び込んできたのは、見た目は普通の男子中学生。
ここねと同じ学校の制服を着ている。
だけどただならぬオーラがある。
というか、とりあえず声がでかい。
「え、えっと……いらっしゃいませ?」
「うっす!!あの……オレ、悩んでるんスよ、マジで!」
真剣な目で勢いよく訴えかけてくる彼に、わたしはちょっとだけ身構えた。
「なにか、人間関係で悩んでるとか……?」
「違います!たこ焼きです!!!」
たこ焼き……!?
思わぬワードにびっくりする。
「たこ焼きが、好きすぎるんス!一日三食たこ焼きでもイケるし、鉄板も三台持ってるし、マヨネーズはカバンに常備してるんスよ!!!」
そんな人いるんだ。
思わずちょっと引いてしまったけど、たしかに熱量はすごい。
「で、悩みっていうのは?」
「オレ、“たこ焼き研究部”を作りたいんス。でも、誰にも理解されなくて!“え、何それ?”とか、“部活じゃなくて屋台じゃん”とか……。たこ焼きの未来を築きたいだけなのに……!!」
すごい熱量。
何かにこんなに熱量をそそげるなんて、すばらしいことだ。
でもきっと、熱を込めるほど、不安にもなることもあるだろう。
やりたい気持ちが強いほど、うまくいかないと落ち込む。
——それでも、やっぱり“やりたい”んだって、彼の目が言っていた。
その気持ちを、守ってあげられるような文具……。



