空翔くんは目をそらして、手で髪をくしゃくしゃっと触る。
「も、もういいでしょ!先輩ずるい!」
「ふーん。……まぁ、がんばりなよ。今はまだ、“つぼみ”でしょ?」
まゆちゃんは、つぼみえんぴつのパッケージを指で軽くつついて、クスッと笑った。
「え? なになに? 空翔くんも”つぼみ“育ててるの?」
ここねは不思議そうに首をかしげる。
空翔は少し慌てた様子で視線をそらす。
「なんでもないっす!」
でも、その耳はほんのりピンク色で。
ここねはその理由に気づかないまま、「?」を浮かべたまま、微笑んだ。
——まだ知らない。
でも、きっといつか気づく。
恋のつぼみも、ちゃんと時間をかけて育っていくってことを。
——『まっすぐな言葉に、こんなに救われるなんて。
“ここね先輩はすごい”って、あの一言で、自信が持てた。』
空翔くんの笑顔は、ほんとずるいくらい明るい。
「……ねぇ、ここね」
まゆちゃんが、ふと声を落とす。
「さっきのえんぴつ、さ。……なんか、今の気持ちも書きたいかも」
「うん。書いてみて。きっとそれも、“つぼみ”になるよ」
「ふっ……なんか、あんたのそういうとこ、ずるいんだよな。すぐ人を安心させる」
まゆちゃんはそう言って、またメモ用紙に小さく何かを書いた。
横では空翔くんが、文房具の棚の前でわくわくしながらラップペンをいじっている。
いつの間にか、パレットには“芽吹いたつぼみ”たちが、あたたかく集まっていた。


