数日後の放課後。
今日もまた店番のために、教室を出ようとしたとき、「ねえ」と誰かに呼び止められた。
ここねが顔をあげると、そこに立っていたのは、まゆちゃんだった。
髪を少しだけ巻いて、リップの色もなんとなくいつもより明るく見えた。
「……ただの、通りすがりだから。勘違いしないでよ?」
開口一番、そう言ってから、まゆはここねの席の近くへ腰掛ける。
そのツンデレ具合、もう慣れた。
「ふふ。つぼみ、元気?」
「なにその聞き方。ペットかよ」
そう言いつつも、まゆはカバンから、あの鉛筆を取り出して見せてくれた。
「……ここ数日、ちょっとだけ使ってみた。誰にも見られないノートに、“この行動がドキッとした”とか、“その人のことを考えるとモヤモヤする”とか、とりあえず思ったことを書いてみたら、なんか……」
「なんか?」
「……ちょっとスッキリしたっていうか。
……いや、別にあんたの魔法文具がすごいとか、そういうんじゃないけど!
……ってか、これ誰にも言わないでよ。マジで」
まゆはばっとえんぴつをしまい、教室の窓の外を見つめたあと、小さくつぶやいた。
「でも……もう少し、書いてみようかなって思ってる。“今の気持ち”を、ちょっとずつ、さ」


