「……でも、最近なんか、わけもなく落ち着かないっていうか。誰かの顔が浮かんで、モヤモヤするの。恋っていうか……なんていうか」
「恋!?」
予想外のワードに、思わず声を上げてしまった。
「なによ、あたしが恋なんておかしいっていうの?」
「あ、いや……そうじゃなくて……」
声が裏返って、恥ずかしくなった。
わたし、無意識に“まゆちゃんは恋なんてしない”って決めつけてたんだ——。
でも、まゆちゃんは自立してて、現実的で、恋愛に興味ないのかと勝手に思っていた。
……こういう偏見がだれかを苦しめることになるきっかけになる。
わたしも苦しんでいたはずなのに。
ここねは心の中で反省した。
「恋っていうか、好きかもしれないとか思うけど、どうしたらいいかわかんないし。
……あたしなんかが、何かしてもムダかなって。どうせ変わらないし、バカみたいに傷つくだけかも、って……ぐるぐる考えちゃって」
ぽつりぽつりと、まゆの“本音”がこぼれてきた。
わたしも思っていたことだけど、人の「あたしなんか」を聞くと、そんなこと思わないでほしいと思った。
「……恋ってさ、バカらしくない?
自分のことすらよくわかんないのに、人のことなんて好きになるとか……意味わかんない。
そんな非科学的なもので、どうしてみんな動けるの? ……こわくないの?」
その言葉の裏にある、“でも止められない気持ち”を、ここねは感じた。


