ふと、女の子が不安そうな顔で言った言葉が浮かぶ。
『正直まだ、将来の夢とかまではわからなくて……』
あのとき、ここねは思った。
何も決められなくても、悩んでも、自分を咲かせる準備は、もう始まってるんじゃないかって。
まだ“つぼみ”のままの気持ちにも、ちゃんと意味があるんだって。
「……じゃあ」
ここねは、芯先が少し削れたえんぴつを手に取った。
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。えんぴつを握る手に意識を集中させて。
目を閉じて、胸の奥にある思いを、そっと重ねていく。
「咲きたいって思う気持ちが、きっと芽を出すって……信じてる。
だから、そんな誰かの手の中で、ちゃんと花開く力を……」
指先が、ふっとあたたかくなった。
ふっと感じたあたたかさは、まるで小さな生命が宿ったかのように、えんぴつの根元に淡いピンクのつぼみ模様を浮かび上がらせた。
その光は優しく、でも確かに力強く、ここねの手の中でほのかに揺れている。
「……できた、かも」
ここねは、えんぴつをそっと立てて眺めた。
名前をつけるなら——
「“つぼみえんぴつ”。
咲く日はまだ先でも、書くたびに、少しずつ自分を育てていけるような……そんな魔法」
ここねはそっと笑みを浮かべた。
まだ小さくて頼りないけれど、このえんぴつの魔法が、自分自身の未来を照らしてくれるような気がした。
胸の奥で、やわらかく灯る光が確かな希望へと変わっていくのを感じながら——。


