店番8日目。
当然のように、空翔くんが店内にいた。





「ここね先輩のおすすめの商品ってなんですか?」

「うーん、どれだろう? みんながみんな、それぞれの魅力を持ってるからなぁ…」





店番をしながらも談笑しているると、扉が開き、ひんやりとした声が聞こえてきた。





「ここのディスプレイ、配色が少し散ってる。もっと統一感出した方が、視線も集まりやすくなると思うけど?」





声のほうへ視線を向けると、そこにいたのは、クラスメイトの黒瀬くんだった。





「……黒瀬くん?」





彼がこの店に来るなんて、想像もしてなかった。
いつもクールで無表情。だけど、頭の回転が速くて、口を開けば正論を投げつけてくるタイプ。





「へぇ。君が店番してるんだ。意外。いや、悪い意味じゃないけど」





なに、その「意外」っていう言葉は。
なんでそんなふうに言われると、心がキュッてなるんだろう。





「商品説明のPOP、手書きなんだ。文字、ちょっとゆるすぎて読みにくいかな」

ぐさっ。





「でもまあ、君らしいっちゃ君らしいね。ほんわかしてて」

ぐさっ、ぐさっ。


口調は冷静なのに、心にナイフみたいに刺さってくる。わざとじゃないのはわかってる。でも、だからこそ余計にしんどい。





「そっか……そういう意見、ありがとう」





うまく笑えなかった。
口角だけが動いて、目元はきっと情けない顔をしていた。


やっぱりわたしには、向いてないのかも……。