その夜。
空翔くんは約束した通り来店した。
「ここねせんぱーい!ちゃんと来ましたよ〜!」
元気な声でドアを開けた空翔くん。
彼の手には、サッカーボール柄のキーホルダーがついたバッグ。
「部活お疲れさま」
「っす!試合前だから、ちょっと早めに上がってきました!それより、見てくださいコレ!」
と、空翔くんが差し出してきたのは——
カバンに貼られた、無数のふせん。
「…なにこれ?」
「“自己紹介ふせん”っす。学校の廊下で落ちてて、面白そうだから使ってみたら……止まらなくなって」
ここねはそのふせんに目をこらす。
《好きな食べ物:オムライス。嫌いな勉強:英語!》
《今日の元気レベル:90(部活後なのでちょっと減)》
《好きな動物:ハリネズミ!理由:とげとげしてるけど、ちっちゃくてかわいい》
《気になる人に伝えたいこと:…ナイショ》
「これ、1日1枚書くと、自分のことがちょっと好きになれるっていう、
“自己肯定感お助けふせん”らしいっすよ」
「へぇ…うちの店の商品だ、これ」
ここねは思わず微笑む。


