「この“コンパスノート”を使ってみたらどうでしょう?」
「……コンパス?」
「これはね、自分の“今”の気持ちを書いていくと、少しずつ“行きたい方向”が見えてくるノートなんです。
自分の中の小さな声を集めることで、少しずつ浮かび上がってくるんだって。それを聞いてあげてほしいです」
女の子はおどろいた顔でノートを見つめた。
表紙には、小さな星が点々と散りばめられている。
まるで夜空に浮かぶ星座みたい。
——自分の“気持ち”も、こんなふうに少しずつつながって、線になっていくといいな。
「……そんなの、ほんとに?」
「本当かどうかは、書いてみてからのお楽しみ、ですよ」
渡されたノートのページを、そっとめくる。
「今日、何が嬉しかった?」
「今、どんな気持ち?」
そんな問いかけが、ふんわりと語りかけてくるように並んでいた。
……漠然と、不安。
何が不安なのか、女の子自身もわかっていなかった。
でも、こんなふうに自分の気持ちに耳を傾けるのは、もしかしたら初めてかもしれないと女の子は思った。
「……書いてみる」
そう言って、女の子はノートをぎゅっと抱きしめた。
まるで、自分のなかの小さな気持ちを、大切に守ろうとするように。


