それからお姉さんは、お店の棚に視線をやった。
「ここ、ほんとにふしぎなお店だね。正直テキトーに入ったんだけどさ……なんか、“わたしのためにある”って感じがするもん」
「それ、わたしも思いました」
「やっぱり?……って、もともとはあなたもお客さんだったってこと?」
「はい。働きはじめて3日目なんです」
「へぇ」
ふしぎな空間。ふしぎな文房具。
まるで、お店そのものが気持ちに寄り添ってくれるような——でもワクワクもするような
そんな、優しくて楽しい魔法が、ここには確かに流れていた。
「さっきはごめんね、子どもだなんて言って。あなた、人に寄り添うことのできる、すてきな店員さんね」
店を出るとき、お姉さんはちょっと振り返って言った。
「ありがとう。——今日のわたし、昨日のわたしより、ちょっと好きかも」
夕焼けの光の中で、お姉さんの笑顔と『パレット文具店』の文字が、そっと重なって見えた。
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