魔法文具屋で、“わたし改革”はじめます!




ここねはカウンターの奥で、小さな文具棚を見つめた。
文房具たちは静かに光を放っている。





「“かわいい”って、人に言ってもらわないと自信がなくなるけど……。
ほんとは、自分で気づけることだったら、もっと素敵かも」





そうつぶやいた瞬間、ひとつのインク瓶がふわりと棚の隅で光った。


透明なガラスの中に、やわらかなラベンダー色のインクが揺れている。


——《ほめことばインク》


手書きの説明カードには、こんな言葉が添えられていた。


“このインクで文字を書くと、相手の心の奥にある“本音のほめことば”が、インクの文字にそっと浮かび上がります。
普段は見えない思いに、あなたもきっと気づけるはずです。”


本音の……ほめことば?


ここねは自分の過去を思い出す。
「いい子」って言われたけど、
なんだか“そう言っておけば満足するでしょ”って思われたみたいで、少しだけむなしかった夜。


本当の気持ちで向き合ってくれる言葉が、どれだけ心を支えてくれるかを、知っている。





「きっとこの人は、誰かの“本当の声”を信じられなくなってるのかもしれない。
だったら……まずは聞いてみてほしいな。本音の、優しい声を」





迷いはなかった。