しばらくすると、店の扉がまた強めに開いた。
チリンチリンという鈴の音が、バタバタとした足音に追いかけられるように響く。





「こんにちはーっ!……って、あれ。店員さんいる?」





カウンターの奥で万年筆を拭いていたここねは、パッと顔を上げた。


毛先までしっかり髪を巻いた、高校生のお姉さんが立っていた。
ピンクのリップが制服にやたら映えている。





「いらっしゃいませ!“魔法文具屋パレット”へようこそ」
少しだけ慣れたそのセリフを、お姉さんに投げかけた。




「あなたが店員さん?」

「そうです!」

「あれ? 店員さんって……あなたなの?子どもじゃない」





その言葉に、すこしだけムッとした。


たしかにお姉さんより年下だし、ここで働き出して3日目のド新人だ。
でも文房具のことを必死に研究し、お客さんに寄り添えるように努力している。





「たしかに新人だけど……わたし、このお店がすごく好きで、たくさん文具のことを勉強したんです。だから、きっとお姉さんにぴったりの文具を見つけられると思います!」

「ふーん……じゃあ、ちょっと期待しとくね」





そう言いながら、お姉さんは店内をぐるりと見渡す。
視線の端で、棚のガラスに自分の姿を映して、髪を整えるしぐさがクセみたいに自然だった。