「Yo! Yo! Yo!
言葉は時にナイフにも、羽にもなるぜ?
けんか腰じゃなく、心を交わせ〜〜!」





棚の奥から、黒に金ラインのド派手な見た目のボールペンが、リズムに乗って転がり出てきた。





「誰!? っていうか、なに今のフロー!?」

「オレこそ“ラップボールペン”。伝える手段は、熱いリリック!
強気な言葉も必要さ、けど優しさがなきゃ誰も聴かない。
攻めも守りも、言葉のバランス。
そこに愛があるかどうかがサイカイ(再会)の鍵さ!」





突然のラップ仲裁に、喧嘩していたペンたちもぽかんとする。





「……なんか、言われてみれば」

「私もちょっと、言葉にトゲがあったかも」




気まずそうに視線をそらす2本のペン。
ここねは小さく笑って、そっと2本を並べ直した。




「どっちも、大事だと思うよ」

「どっちも?」

「だってね、強気に背中を押してくれる言葉も、そっと心に寄り添う言葉も。どっちも人を救う魔法だよ。
状況や気持ちに合わせて選べるように、こうやって並べておくのがいいんだよ」





なにが正解とか、ない。
そんなもの作らなくていい。





「強い言葉も、やさしい言葉も。ちゃんと使い分けできたら、それってすごくかっこいいことだよね」





ペンたちは、しばらく沈黙したあと、ぽつりと、

「……まぁ、今度から“ラップボールペン”の近くに置いてくれよな」

「うん……私も、ちょっと見習うよ……」





仲直りしてくれてよかった。
これからはラップボールペンは「文房具たちの仲裁係」として、棚のど真ん中に置いておこう。