「あれ、昨日の魔法文具屋さんじゃないッスかー!」
“たこオタ”くんがここねに気づいた。
「すごいね。めちゃくちゃ手際いい!」
「そうッスか!?あざっす!いつもいっぱい特訓してるッス!」
これは、努力の結晶なんだね。
こんなに努力できる人なんだから、結果は必ずついてくる。
すると、いつも勢いあふれる“たこオタ”くんが、ほんの少しだけ影を落とした。
「ほんとは最近、“たこ焼き研究部”の発足を諦めようとしてたんス。誰にも理解してもらえないから、悲しくて」
「そうだったんだ……」
「でも昨日あの魔法文具屋さん見つけて、『ねばりノリ』くれたじゃないッスか? あれを持ってみたら、思ったんスよ。“もうちょいだけ、ねばってみようかな”って」
”たこオタ“くんは照れたように笑って、
できたてのたこ焼きを1つ、紙のお皿に乗せてここねに差し出した。
「一番うまくできたやつ。お礼ッス!」
あつあつを口に入れると、とろっとしてて、香ばしくて——-すっごく、おいしい。
「すごいね……! 本当に、プロみたい」
「へへっ、でしょ?」
その笑顔は、ちょっと誇らしげで。
ねばったその先に、ちゃんと自信が芽生えてるのがわかった。
ここねは、自分の胸のあたりが、ぽっとあたたかくなるのを感じた。



