めいっぱいお風呂を堪能した後出てみれば、しわしわの制服と使い古した下着は新品の部屋着と下着に変わっていた。



サラサラの着心地にびっくりしつつ、薄手で動きやすいワンピースタイプの部屋着に腕を通し、用意されているスリッパを履いて脱衣場を出た。



脱衣場を出たらそのまま自分の部屋に行っていいとのことだったので、教えられた道順を思い出しながら歩いてみた。



曲がり角を三つ無視してから右に曲がってまたまっすぐ。



そのさきにはお城かって感じの螺旋階段があって、それをのぼる。



2階の、右側に見える2つ目のドアが、私の部屋に繋がっているらしい。



ドアの前に立って見てみると、ドアに小さくアルファベットで「Setsuna」と書いてあった。おしゃれだ。




「うわあ……」




冷たい足触りの石床にカーペットが敷かれている廊下と違い、私の部屋はホワイトウッドのフローリングだった。



何畳なのかはさっぱりわからないけど、一般家庭のリビングってこんな感じの広さなんだろうなと思う。



座り心地がよさそうなソファとガラスの天板のローテーブルに、面白そうな本がいっぱい詰まった本棚。



大きすぎる気がするテレビにメイク道具、アフタヌーンティーが飲めそうなセットまで。



奥には大きなベッドもあるし、クローゼットだってとっても広い。



そこには、いろんな種類の部屋着や外出用の服とか靴が揃っていた。



かわいいのとかエレガントなやつとか、ダメージジーンズもあって、コーディネートが楽しめそうだ。



新しい通学バッグや教科書ノート、筆記用具もある。



部屋の雰囲気としてはシンプルでありつつも女子っぽく洗練されている感じだ。



な、なんだこれ。



私ってただ雇われるだけじゃないの……?



「俺に興味を持たれるっていうのはそういうこと」って言ってたけど、これじゃあお姫様に転生した気分だ。



衣食住は保証されるって話だったっけ。てっきり使用人部屋の一つを与えられるだけかと思ってたのに。



もしこれが使用人部屋なら引くよ。本気でドン引きするよ。




「…………一日で、暮らしが変わりすぎでは?」




ぼふんとベッドに飛び込み、枕を抱えて呟いてみる。



窓際に置いてあったオルゴールからはただ綺麗な曲が流れてくるだけで、返事は返ってこなかった。



ただそのオルゴールは心地良すぎてどんどん私を眠りに誘っていく。



ううう、寝てしまう。高級ベッドの魔力…。木の床で寝慣れてる身としては不覚……!



――なんて意味のわからないことを考えるも束の間、私は意識を手放した。