今夜、星影を溶かして【完】


さて。私は、一応尊都さんに雇われている立場であるわけだが。



基本的に、尊都さんは私というペットを「放し飼い」してくれている。



普段高級の黒塗り車が迎えに来てくれるのは私が頼んでいるからだ。



マップを見ても、尊都さんの家に辿り着ける気がしないし。



だからもし私が、行ったことがないカフェの飲み物を飲んでみたいから放課後行ってくる、と言えば。



当然、尊都さんは「いいよ、行っておいで」と優しく頷いてくれるのである。




「ふふふふふふふ…………」




この刹菜、ついに人気カフェに初・上・陸!



ああ……夢にまでみた「放課後カフェに寄る」が実現するなんて!時間とお金があるって素晴らしい。



と、感動に浸っていると毎度ながら周りの人に白い目で見られます。悲しいです。



でもそれすら気にならない。ああ楽しみ!



ウッキウキすぎて、スキップしながらカフェに向かう。



車のお迎えは10分後にお願いしている。



帰ったら仲良くなったメイドの片岡さんに嬉しさを報告しようと意気込みながら、私は満面の笑みで向かった。



――のだけれど。




「へへへへへ……いいカモがいて助かったぜ」




こうなるはずじゃなかったのになあ。



なんでカフェに行くはずだったのに私は誰かのカモにされているんだ。



私は誰かに運ばれるのを感じながらそう心の中でため息を吐いた。



カフェへの道中で、私は後ろから殴られて気絶してしまったようだ。



無駄に身体能力はいいのに、周りに人が来ても気付けない自分の鈍感さにはほとほと呆れる。いつもそうだ。



でもまあ、今は自責の念に震えている場合ではない。



幸い、殴ってきた人たちが目的地に着く前に意識が戻ったし、この人たちはそれに気づいていない。



状況確認から始めよう。




「にしても、いい女が入ったもんだなあ」



「本当に!どんな女も買ってくれますから、この女はさぞ高値で売れることでしょうなあ!」




また人身売買?最近多くない?



尊都さんと初めて会ったときも人身売買のために攫われたんじゃなかったっけ……?



最近、ただでさえ悪かった街の治安がさらに悪くなっている気がする。



人身売買が多いのはそのせいかもしれないな。




「さあさあ、このままあいつのとこまで運びましょう!今回は100万は固いですよ!」




そのまま私は何かに入れられ、エンジンをつける音がした。



どうやら車の荷台に入れられたらしい。商品の扱いが乱暴で大変不満である。



でもそのおかげで、監視の目は特にないようだ。



そう判断して目を開き、自分の状況を確認する。