「おー!さっきぶり、刹菜!」
「はい、こんにちは、黒葉さん」
さっきファミレスで唐揚げを5皿平らげてきたらしい黒葉さんは、満面の笑みで私を出迎えてくれた。
元気そうでなによりだ。
だがその前にちょっと聞きたい。
「あの尊都さん、ここって尊都さんのお家ですよね?」
「そうだよ。どうかしたの?」
「どうして家に『小会議室3』があるのです……?」
それって普通公民館とかにあるやつじゃないのか。
確かにここは公民館よりも広いような気がするが、家に小会議室があるのはどう考えてもおかしい。
その疑問に対し、隣に立つ尊都さんは微笑んで答えた。
「それは、俺たちがすごいからだよ」
あまりのドヤ顔。
奥で黒葉さんが肩を震わせているけれど、それ以上に尊都さんのお顔が整いすぎてなんか説得力あるなあ。
「はえー。なんかそれで納得しちゃいました」
「ぶはっ。納得すんの早すぎね?」
「いやだって、確かにすごいよなあと思って」
私の返答に吹き出した黒葉さん。失礼な人だ。私なりに納得したというのに。
なんか、尊都さんにはほぼ全て「すごいから」で片付けられそうな風格がある。
確かにそうだな、みたいな?
ここで尊都さんが誤魔化したのなら深掘りしないほうがいいかもという野生の勘が働いたせいもあるけれど。
「ところで、尊都さんと黒葉さんはどういったご関係で?」
「俺たちは昔からの悪友なんだ。なにをするにも一緒の、な」
「へー。仲良しなんですね?」
「おうよ!」
仲良しなんですね、という言葉に反応したのは黒葉さんだけ。
でも、尊都さんの満足げな顔を見るだけで、尊都さんも黒葉さんを自慢に思っているのが伝わってきて。
私は一人、尊いなあとほっこりしてしまった。
「羨ましいです、そういう悪友。私も友達欲しい……」
「刹菜は昔から貧乏だったの?ずっと?」
「え?ああ、はい、そうですねえ……?」
私の返事は煮え切らない。
貧乏だったかと言ったらそんな気もするけど、でも少なくとも一昨日までの超絶貧乏時代よりは良かった気もする。
毎日ちゃんと洗った服を着てたことは覚えてるんだけど。
「あんまり覚えていないです。もう何年も前ですし」
「あーだよな、わかる。俺も幼稚園児のとき、ハロウィンの園長先生のコスプレがマジで怖かったことしか覚えてない」
「あれは黒葉が怯えすぎだったんだよ」
「いーや!怯えてなかったの尊都だけだから!お前がイレギュラーだから!」
……とまあ、賑やかな黒葉さんと穏やかな尊都さんの小さい頃の話を、楽しい気持ちで拝聴できてハッピーな私であった。



