そしてそのあと。




「ぷっ……くくく、『鬼をつケてくだいね!』だって、かわいー」



「さっきやっと送信取り消ししたのに残ってる……⁉︎」




夕食をワゴンで運んできた尊都さんは、私の隣に座りながらスマホを見せつけてきた。



私の誤字!!何でまだ残ってるの!!!




「面白すぎてその場でスクショした。ごめんね?」



「すくしょ……?」



「スクリーンショット。画面の状態をそのまま写真撮るってこと」



「えっ⁉︎じゃあそれ写真⁉︎」



「そゆこと」




なぜ撮っている⁉︎面白かったからってそれ撮る⁉︎



っていうか恥ずかしすぎでしょそれ!




「消してくださ――むぐ」



「ほら食べて。スープ冷めちゃうでしょ」



「…………おいひい……」




消してはくれないようだ。



それでもスープを食べたあとに尊都さんに粘って「消して」と願ったら、スクショをお気に入り登録されてしまった。



解せぬ。




「残念でした」




べっ、と尊都さんが舌を出す。



そんな仕草が異様に色っぽくて。




「……むう」




私は、反論するにも言葉が出なくなってしまったのだった。





「そうだ、紹介したい人がいるんだった」



「紹介?」




夕ご飯が終わって使用人さんの1人がワゴンを下げたあと、尊都さんは思い出したように言った。



私に紹介……はっ、まさか親とか……⁉︎




「っていうかもう刹菜は知ってる人だよ。唐揚げ奢ったんでしょ」



「唐揚げ?ってもしや」



「そう。黒葉だよ」




一瞬で「親とか……⁉︎」とハイになっていた私が冷静になった。



尊都さんの親というか、むしろ唐揚げを奢って健康を心配する私がどっちかというと黒葉さんの母だ。




「黒葉さんって、尊都さんのお知り合いだったんですね」



「まーね。俺からしたら2人が知り合ってる方が驚きかな。あいつはなにやってんだか。あれほど休めと言ったのに」




やっぱり多忙だったらしい。だけど倒れるまでやるべきじゃない、と尊都さんはお怒りのようだ。




「現に俺は、かわいいペットを愛でて疲れを癒してるってのにさ」




尊都さんは、ぽんぽんと私の頭を撫でてから立ち上がり、そして私に手を差し出した。



握手?もしかして握手求められてる?



首を傾げながらとりあえず握ると、尊都さんの細い腕でぐいっと体を引っ張られた。



うわ恥ずかし。全然握手じゃなかった。




「行くよ、刹菜チャン。あいつにお前の面白さを教えてあげないとね」



「えっ、それってどういう……?よくわかんないですけど、はい!」




ちょっとなにしたいのかよくわからなかったが、尊都さんが嬉しそうだから、いっか。



私は何だか楽しい気持ちになりながら、足の長い尊都さんに小走りでついて行ったのだった。