翌日。




「はわわわ…………!」



「ふはっ、目きらきらしすぎ」



「だ、だって、もやしばっかの白色弁当なんかじゃない…栄養バランスってこういうこと…!」



「なんかだんだん可哀想になってきた」




いっぱい食べてね、と傷ましそうな目で私を見つめる尊都さん。今度デザートのイチゴを増やすように言ってくれるみたい。本当に優しい。



これからはだんだん食べる量を増やして普通に食べられるようにする、とも言ってくれた。やっぱり優しい。



とまあ、ご飯の話は置いといて、今は早朝。私は毎週3回の新聞配達バイトの癖が抜けずにめっちゃ早く起きた。癖ってすごい。



ということで朝の準備をしようと思って部屋を出たところ、尊都さんとばったり会ったのだ。



私、てっきりお弁当は自分で作るものだと思ってたからキッチンを借りようとしてたんだけど。



そしたら。




『もうできてると思うよ』



『えっ?』



『朝ごはんもだけど、今日の弁当も軽めだから。ちょっとずつ食べる量増やそうね』




面倒見良すぎか。保育園の先生でもやってたんか。



ということでお弁当を見にきたら、なんとびっくり。もやしだらけ真っ白弁当じゃない。



色鮮やかでなんと素敵。しかも私の胃にちゃんと配慮してある。



幸せってこういうことだ。




「ところで、尊都さんはもう出るんですか?」



「まーね。今日は重要なやつがあるから早く起きただけだけど」



「へー。大変ですねえ」



「お前が人のこと言える?つい昨日までそういう生活してたくせに」



「ははひへふははい」




ほっぺをぐにーんと引っ張られたのでジト目で言い返しておく。


もうスーツまで着ちゃって準備万端に見える尊都さんはそれを見て吹き出した。




「見てて飽きないね、刹菜は」



「そりゃどうも」




尊都さんの役に立ってるなら何よりだ。



なんてったって、私は尊都さんの「暇つぶし」として雇われているのだから。



私は割と好き勝手言っているけど、それが面白いというなら好都合ってものだ。




「あ、そうだ。バイトは辞めさせといたよ」



「全部ですか?」



「全部。ついでにあのボロボロのアパートも解約しといた」



「わあ家の場所まで調べたんだ」



「隠す気ないでしょ。鍵の一つもなかったし」



「それはボロボロすぎるからですよ」




なんで取り壊されてないのか不思議ってくらいだったからな。



月一回は水漏れするし。




「……じゃあ俺は行くけど、ちゃんとご飯食べてね。キッチンに行けば用意してくれるから」




なんかお母さんみたいだなと思いながらも頷くと、「いいこ」と頭を撫でられた。



頭撫でんの好きなのかな。まあいいけど。




「いってらっしゃい、尊都さん」




私がそう言って微笑むと、少しだけ目を見開いた尊都さんは顔を綻ばせて、返答してくれた。




「いってきます。」