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「ふぅ…なんとか今日もスムーズにいけた…」
心配してたシーンの撮影が終わった控え室で
一息ついていると
マネージャーさんが入ってきた
「奈々ちゃん」
「ん?」
「実は
次のお仕事…決まりましたー!!」
「えっ!?ほんとに?」
一気に心臓が跳ねた
「しかもしかも!ドラマ主演、来た!」
「……え!?えええ!?主演!?」
「うん!深夜枠だけど、注目の若手枠ってやつだよ」
頭がぐるぐるしてた
主演――
主演って…あの主演!?
「すごいじゃん!よく頑張ってきたね、奈々ちゃん!」
「う…うん……!やったぁ!嬉しい…」
自然に笑顔がこぼれてた
けどその次に続いた言葉で
一瞬動きが止まった
「でね…内容なんだけど」
「……?」
「また"恋愛"なんですよー」
「……!」
「しかも…今回のはちょっと大人めでさ。
その…ベッドシーンもあるんだよね」
えっ…
ええ……!?
ベッドシーン…!?
ベッドシーンって……
あの……
そういうことだよね……?
わたしまだ18歳だし
そもそも恋愛経験なんて…
一気に体温が上がった気がした
やった!って喜んだばかりなのに
頭の中が真っ白になっていく…
「びっくりしちゃうよね……いきなりの主演で
ベッドシーンあるなんて。
奈々ちゃんが嫌だったら、無理しなくていいんだよ?」
マネージャーさんが
少し心配そうに覗き込んでくる
──できるのかな…私に……
──そんな…リアルなシーン…ちゃんと演じられるの?
──でも……
──でも…主演だよ……?
こんなチャンス
きっと滅多に来ない…
やりたい
やってみたい
…私は
ギュッと拳を握った
「ううん……やります!やりたいです!」
少し声が震えてたけど
はっきり言えた
マネージャーさんが笑顔で頷いてくれた
「うん、分かった!じゃあ…その方向で進めとくね」
「はいっ」
──その日の夜
部屋に戻って
ソファに倒れ込んだ
スマホを見つめながら
ずっと考えてた
……とは言ったけど
……ほんとに私にできるのかな
ベッドシーンって
どこまでやるんだろ
キスとかはそりゃあるよね…
脱いだりするのかな…いやそうだよね…
緊張と不安がぐるぐる回って
眠れそうになかった
でも
心の奥では
……やっぱり逃げたくない
しっかりと
そう思ってた



