「……これ、どういうこと?」
___それはいきなりだった。
マネージャーからスマホを渡された奈々。
画面を見た瞬間
___言葉を失った
そこに映っていたのは
楽屋前で涼真と美月が笑いながら立ち話してる写真だった
涼真が、美月の肩に軽く手を添えている
その仕草が、まるで恋人にしか見えない角度だった
『人気若手俳優・神谷涼真 新進女優との親密ショット流出』
『現場での“距離感ゼロ”に関係者も驚き』
タグには《付き合ってる?》《お似合い》《あの子可哀想…》
奈々の名前も、ぼんやりと浮かんでいた
「ただの噂で終わってくれればいいけど……下手したら事務所から確認くるかも」
「奈々ちゃんも関係性、聞かれるかもしれないから、準備しといて」
マネージャーの言葉が遠くで響く
奈々はただ、スマホを返すだけで精一杯だった
……何も言えない
私たちが付き合ってるなんて、誰にも言ってない
言える立場でもないし、言っちゃいけないこともわかってる
でも、胸の奥がざわざわして
息を吸うだけで喉の奥が痛んだ
“なんで肩なんかに……触れてたの?”
“なんで、あんなふうに笑ってたの?”
冷静になりたくても、頭の中でその一枚が何度もループする
撮影の合間、ふと廊下に出たとき
ちょうど前から、涼真が歩いてきた
一瞬だけ目が合う
その目は、言葉なんかなくてもちゃんと伝わってくる目だった
《信じてていいから》
《俺が触れたいのは、お前だけだから》
___そう言われてるような気がした
奈々は、小さくうなずいた
でも――
心の奥には、まだ小さな棘が刺さったままだった



