___数日後の撮影現場

 

今日は別の作品の撮影で現場に入ってた

 

主演のドラマはまだ本格的な撮影前で
今は合間で小さな役の仕事を挟んでる時期だった

 

──でも



今日この現場に来る前から

…ずっとソワソワしてた

 

現場の空気に紛れながら

自然と視線で探してた

 



…涼真くん

 

___現場の奥



スタッフと談笑してる姿を見つけた時

胸の奥が少しだけ跳ねた

 





「おはよ」

 

背後から不意に声がかかる

 

「わっ…お、おはよう!」

 

振り返ると

そこに涼真くんが立ってた

 



今日はラフな私服で
キャップもサングラスもしてない分…

いつもより余計に”男の人”って感じがした

 

「現場、かぶったな」

 

「ははっ……そだね」

 



なんだろう…


別に久しぶりでもないのに

顔見るとちょっと緊張してしまう

 

お互い、軽く目を合わせて
少しだけ目線を外した

 

「主演のほう、準備進んでる?」

 

「あ、うん…まあなんとか」

 

「そっち、結構ハードだろ。撮影内容」

 

涼真くんの言葉に
胸がズキッとした

 

「……まあ、ね」

 

「でも…ほんと、正直よく受けたよな」

 

「……」

 

私は小さく笑った

 

「……せっかくもらえた役だし、
初主演で…逃げたくなかったから」

 

涼真くんも
それを聞いてふっと笑った

 

「…らしいな、お前っぽい」

 

「…え?」

 

「そういうとこ、俺けっこう好きだよ」

 

不意にそんなことを言われて
一瞬、呼吸が止まりそうになった

 

「…ぇ…え?」

 

「決めたら曲げないとこ。芝居に真っすぐなとこな。昔から」

 

「……う、うん…」

 

私の耳が熱くなっていくのが分かった

 

そのタイミングで
スタッフに呼ばれて慌ただしく現場が動き出す

 

「悪り。じゃ、また後でな」

 

「うん…!」

 

去っていく涼真くんの背中を見送りながら
胸の奥がずっとソワソワしてた

 

──なんでこんなに
意識してるんだろう、私…