私は春野奈々
18歳で現役高校生だけど
同時に女優業もやらせてもらっている。
って言っても
……まだまだ新人
けど
ありがたいことに
最近はCMとかドラマにも出させてもらえるようになった
___だけど
恋愛シーンだけはどうしても…
毎回つまずいてばかりで
今日の撮影でも
監督から言われてしまった…
「奈々ちゃん、もう少し揺れる感じが出せるといいかな」
「そこはもうすこし感情を表に出せそう?伝わりにくいかも」
……わかってるけど
わかってるんだけど
「すみません。もう一度お願いします!」
どうしても無理
他はちゃんとやれるのに…
「はぁ」
自然とため息がこぼれた
「……あれ?春野?」
不意に呼ばれた名前に
振り返った先
神谷涼真が立ってた
「りょ…涼真くん!?」
彼は子供の頃の幼なじみ
でも今は
映画にドラマに引っ張りだこの
人気若手俳優さんになってて
久しぶりに見るその姿は
昔と違って
なんだか大人っぽくなってた
「やっぱり?まさか現場で会うとはな」
「えぇ!ほんとだよ…びっくりした」
自然に笑えるのは
昔からの関係だからかもしれない
「おいおい、すっかり女優さんだな」
「そんなことないよ…まだまだだし」
胸の奥が少しだけ熱くなる
やっぱり
同じ芸能界にいても
全然違う場所にいるんだなって思った
まさかまた会えるなんて……
「良かった顔見れて!また会おうな、現場で」
マネージャーさんに呼ばれ
涼真くんは"ごめんな"と手を合わせて
私を見るなり、行ってしまった
ふわっと微笑むその笑顔が
昔よりずっと大人びて見えた
「…あ…うん、またね!」
昔からかっこよかったけど
更にかっこよくなったなぁ、涼真くん…
「おーい!奈々ちゃん!次こっちお願いしまーす!」
「あ、はい!」
マネージャーさんに呼ばれて
私は足早に控え室へ向かった
「んーーっとねえ、
全体は良かったよ!でもやっぱり…
恋愛シーンはもう少し感情を細かく出せるといいかな」
「……ですよね。頑張ります」
「なかなか難しいとこでもあるもんね!でも奈々ちゃんなら大丈夫だよ!」
「はぁ…ほんとすみません。ありがとうございます…」
また次の課題が増えた...
__恋愛経験ゼロなわたし
ただいま究極のピンチを
迎えている最中です…



