魔法のマーメイドクラブ

 貝殻のポシェットを、ガサガサとあさり始めたアクアちゃん。双眼鏡のようなものを取り出して、窓にピッタリとくっつけた。
 フムフムとつぶやきながら、じっと見ている。
 わ、わ、わ! やっぱり、わたしたちすごくあやしい人だ!
 早くなんとかして、カナトくんを連れ出さなきゃ……その前にわたしたちが警察に捕まっちゃうよ!

「ココは……オ、オヨヨ?」
『ニャーーンッ!!』

 とつぜん、カーテンのすき間からグレーのネコが顔を出した。丸々とした体を、うんしょうんしょとねじ込んでいる。
 なに、この猫ちゃん? カナトくんの、ペット?

『オマエラ、ダレニャン。ドロボウカニャン?』

 三日月のような目が、ジロリとこっちを見た。
 窓越しなのに、言葉がわかる。まるでスピーカーで話しているみたいに。

「違うヨ! アクアとミイちゃんは、友ダチダヨ! カナトに用があるんだヨ〜!」

 大きな声で答えるアクアちゃんに、シーシーッと合図を送る。
 だって、丸聞こえなんだもん。外に人がいたら、バレちゃうよ。

『カナトニハ、アワセラレナイニャン。アキラメロニャン』

 ムスッとした顔で、猫はファ〜とあくびをした。
 完全に見下されている。こんなところで、引き下がれないよ。

「猫さん、なにか食べたいものある? ツナ缶とか、ポテトチップスもあるよ」

 とりあえずつめ込んできた食べ物を、チラリと見せた。
 名付けて、エサでつって開けてもらう作戦! 
 上手くいくとは思えないけど、これくらいしかアイデアは浮かばない。

『……ナニアジニャン?』
「えーっと、ハニーバターチキン味です」

 細かった猫の目が、だんだんと見開いていく。
 興味もってる! いけるかもしれない!

「アクア……? ミイ!」