魔法のマーメイドクラブ

 悲しそうなカナトくんが、頭に浮かぶ。
 学校ではクールな印象しかなかったけど、いっぱい笑って、楽しそうにするところを何度も見た。
 秘密基地へ集まって、一緒に魔法アイテムで遊んで……。いつもとなりには、カナトくんがいた。

「……行く!」

 気づいたら、そう叫んでいた。
 コンコン。
 なにを準備したらいいだろう。とりあえず、リュックにお菓子やライトをつめ込んでいたら、窓をたたく音がした。

「カラス? 今、忙しいからあとでね」

 気にしないでドタバタと走りまわっていたら、また聞こえたの。
 もしかして、まさか……ね?
 レースのカーテンを開けたら、手をふるアクアちゃんがいた。

「アクアちゃん!」
「さっそく来たヨォ♪」
「空、歩いて来たの?」
「その方が早いからネ〜! ホイッ、ミイちゃんも履いて♪」

 せかされて、目の前に置かれたウィングスニーカーに足を入れる。
 羽根の部分がピカピカ光って、わたしたちは空の上へふわふわと浮かび上がった。
 おっとっと。バランスを崩しそうになりながら、元の体勢に戻る。最初は少し不安定だったけど、二回目だからコツをつかんできた。

「ミイちゃん、だいじょぶ?」
「平気だよ。慣れてきたし、空を歩くって、やっぱりワクワクする」

 自分の家が小さくなっていく。
 お母さんやカンちゃんは、わたしが魔法で遊んでいるなんて思いもしないだろう。
 五年三組のみんなや先生だって、何も知らない。りっちゃんには、少し気づかれているけど。

 学校を通り過ぎて、カナトくんの家が見えてきた。ゆっくり近づいていって、ベランダへ降り立つ。
 ここがカナトくんの部屋なのか、わからない。中をのぞいてみるけど、何も見えない。
 わたしたち、大丈夫かな。間違いなく、不審者なんじゃ……。

「ちょっと待ってネ! たしかめてミル!」