魔法のマーメイドクラブ

「リムより小さくて可愛くて、カナトくんに助けてもらって、ちゃっかり仲良くなってるし!」
「り、りっちゃん?」
「ミイちゃんばっかり、ずるい! リムのないもの、いっぱい持ってる!」

 とうとう、りっちゃんが壊れた。
 なにがあってもポーカーフェイスで、取り乱すことはなかった。そんなりっちゃんが、真っ赤になって怒鳴ったの。
 りっちゃんがそんなふうにわたしを見ていたことも、初めて知った。

 自慢できることはなにもない。なんのとりえもない。どうせわたしなんかって、いつも思っていたのに。

「あやまらないから。ミイちゃんだって嘘つきだし」
「……えっ」
「ほんとは自分で泳いでないじゃん」

 ドキッとして、わたしは顔を下げた。目を見なくていいように。
 りっちゃんは、気づいていたんだ。あの時、ロビーで呼び止められたのは、その話をしようと……?

 何を言われるんだろう。怖くて、手が震えてきた。
 貸し出しノートにわたしの名前を書いて、本のバーコードを読み取る音がなる。

「どうせ、アクアちゃんのおかげでしょ? なんか不思議な力持ってるみたいだし。あの子って魔法使いなの? あの秘密基地だって、魔法かなにかなんでしょ?」

 フンッという感じで、カウンターの上に本が乗せられた。
 どうしよう。人魚だとは知らないようだけど、ほとんどバレているようなものだよ。

「えっと、その……」