「基地の中の物では不可能だったけど、記憶をのぞけたものがあるの。見てみる?」
棚の引き出しから、波木さんが何かを取り出した。
薄汚れた白い布。あの人魚のマークは、秘密基地のテントだ!
壊されて捨てたはずだったけど、波木さんがこっそり取っておいてくれたんだって。
テントをさわった手を、鏡へ押し付ける。グッと力を入れると、波木さんの手がうず巻きの向こうへ入っちゃった!
……どうなってるんだろう。
痛そうなわけでもなく、平気な顔で、波木さんがスーッと手を抜いた。
鏡面がゆらゆらして、何かが映る。秘密基地の草っ原だ。
ぐわんぐわんと画面が動いて、映像がコロンと横向きになった。まるで、カメラが倒れたみたいに。
これって、もしかしてーーテントが壊された日の……。
「見てミテ! 右の下、誰かいるヨ」
アクアちゃんの声に、ゴクンとつばを飲む。
白いスニーカーが見えて、ゆっくりと全身が映った。
デニムのワンピース……りっちゃんだ。今回は、しっかり顔もわかる。
やっぱり、秘密基地へ近づいていたんだ。
慌てた様子のりっちゃんは、長い枝を持ってーー。
全部が終わると、鏡面はまたゆらめいて、普通の鏡へ戻った。
言葉が出ない。たぶん、みんなも同じ。心がドクドクして、変な汗が出ている。
黙ったままでいると、波木さんが鏡を棚の上へ置いて。
「誰でも、心に小さな悪魔を飼っているの。それに、負けるか勝つかだけ」
ウニョウニョと、アクアちゃんの髪からパトラが出てくる。
一緒に映像を見ていたのか、プンスカと怒っているようにも思えた。でも、どこか悲しそう。
分身だと言っていたけど、パトラはまるで、アクアちゃんの心を表しているようだ。
「これからどうするかは、あなたたち次第。心の準備ができたら、ちゃんと話すといいわ。ね、美波ちゃん」
「あ、えっと……」
うまく返事が出来なかった。
りっちゃんのことも、わたしが嘘をついていることも。波木さんには、すべてお見通しみたい。
棚の引き出しから、波木さんが何かを取り出した。
薄汚れた白い布。あの人魚のマークは、秘密基地のテントだ!
壊されて捨てたはずだったけど、波木さんがこっそり取っておいてくれたんだって。
テントをさわった手を、鏡へ押し付ける。グッと力を入れると、波木さんの手がうず巻きの向こうへ入っちゃった!
……どうなってるんだろう。
痛そうなわけでもなく、平気な顔で、波木さんがスーッと手を抜いた。
鏡面がゆらゆらして、何かが映る。秘密基地の草っ原だ。
ぐわんぐわんと画面が動いて、映像がコロンと横向きになった。まるで、カメラが倒れたみたいに。
これって、もしかしてーーテントが壊された日の……。
「見てミテ! 右の下、誰かいるヨ」
アクアちゃんの声に、ゴクンとつばを飲む。
白いスニーカーが見えて、ゆっくりと全身が映った。
デニムのワンピース……りっちゃんだ。今回は、しっかり顔もわかる。
やっぱり、秘密基地へ近づいていたんだ。
慌てた様子のりっちゃんは、長い枝を持ってーー。
全部が終わると、鏡面はまたゆらめいて、普通の鏡へ戻った。
言葉が出ない。たぶん、みんなも同じ。心がドクドクして、変な汗が出ている。
黙ったままでいると、波木さんが鏡を棚の上へ置いて。
「誰でも、心に小さな悪魔を飼っているの。それに、負けるか勝つかだけ」
ウニョウニョと、アクアちゃんの髪からパトラが出てくる。
一緒に映像を見ていたのか、プンスカと怒っているようにも思えた。でも、どこか悲しそう。
分身だと言っていたけど、パトラはまるで、アクアちゃんの心を表しているようだ。
「これからどうするかは、あなたたち次第。心の準備ができたら、ちゃんと話すといいわ。ね、美波ちゃん」
「あ、えっと……」
うまく返事が出来なかった。
りっちゃんのことも、わたしが嘘をついていることも。波木さんには、すべてお見通しみたい。



