裏切りの罰 ー愛していたのは親友でー

その日は何もない夜だった

理玖からのLINE通知が鳴ったのは、ちょうど寝る準備をしてたとき

 

──『俺も愛してるよ 早くまた抱かせて笑』

 

え…?

 

画面を見つめたまま、息が止まった

 

誰宛…?
私に?…じゃない
だって──次の瞬間

 

──メッセージが【送信取消し】された

 

指先が震えた
胸の奥がズキッと痛む

 

──見てしまった
──でも、見てないフリをするしかなかった

 

理玖からその夜、何事もなかったように『おやすみ』のLINEが届く
その優しいメッセージすら、胸をえぐってきた

 

 

翌日

学校の昼休み

 

「紗奈、昨日LINE間違って送ったかも。変なの行ってなかった?」

 

理玖のその言葉に
私の心臓がまた大きく脈打つ

 

顔は作り笑いのまま

 

「え?ううん、特に何も。寝てたから通知見てないし」

 

理玖は一瞬だけホッとした表情を見せた
でも私は見逃さなかった
わずかな安堵と…隠しきれない動揺を

 

(やっぱり…何かある)

 

私は少しずつ
「疑い」を「確信」に変え始めていた






放課後


部活の提出物を届けるために
たまたま使ってない部室棟を通った

 

そこで──



誰もいないはずの部室棟に
微かな物音が響いていた

 

──ガタッ

 

息を潜めて近付く

扉の隙間から漏れる声は
聞き慣れた──けど、今は恐ろしいほど違う声色だった

 

「…っん…理玖…だめ…声、出ちゃう…」

「いいだろ?誰も来ねぇよ…」

 

震えそうな指先を押さえながら
私はそっと隙間を覗いた

 

──そこにいたのは
紛れもなく理玖と瑠奈だった

 

制服は乱れ
理玖の手が瑠奈の太ももを這う

瑠奈の唇が何度も理玖の首筋に吸い付いていた

 

「…んっ…もっと…理玖…」

「瑠奈、…声我慢できる?…ばれたらヤバいぞ?」

「ん…やだ…バレたら…もう全部壊れちゃう…」

「大丈夫だよ──紗奈は何も知らない」

 

理玖の声は優しく囁くようで
残酷だった

 

耳に焼き付く、甘ったるく滲んだ喘ぎ声
濡れたような吐息が部屋に充満してる

 

私は
喉の奥まで込み上げる何かを必死に飲み込んだ

 

心臓が
ズタズタに千切れる音がした

 

足を止めたら崩れそうで
私はゆっくり、でも確実にその場から立ち去った

 

背後ではまだ
ふたりの声が──重なり合いながら響いていた

 

 

──この瞬間
私の”恋”は、完全に終わった

 

そして
“壊されたもの”の痛みが
ゆっくりと別の感情に変わっていった

 

復讐、という名の──静かな怒りに