ううん、違う


──やっぱり、気のせいだよね?

 

何度も自分に言い聞かせた

瑠奈は親友で


理玖は私の彼氏



そんなドラマみたいな最低な裏切りなんて

現実に起こるわけがない

 

…そう思いたかった

 

だけど
積み重なる違和感は、消えてくれなかった

 

理玖が少しずつ触れてくる回数が減って
「疲れてるから」「明日早いから」
最近はそんな言葉でごまかされることが増えた

 

寂しい
不安

でも
「理玖を疑う私が悪いのかも」
そんなふうに自分を責めてしまう

 

 

そんなある日──

瑠奈の部屋に遊びに行くことになった

 

「ねぇ、今日暇なら紗奈おいでよ?たまには女子会しよ!」

 

瑠奈の笑顔は変わらなかった
あの日も

 

部屋に入ると
可愛い小物がたくさん並んだおしゃれな部屋

 

「飲み物取ってくるね〜なんでもいい?」

「うんなんでも大丈夫!ありがと〜」

 

一人になった瞬間
何気なく部屋を見渡す

 

その時──
棚の隅に置かれたスマホスタンドが目に入った

 

…あれ?

 

見覚えがありすぎた

理玖がいつも使ってる
傷の入ったスマホスタンド

 

…まさか
偶然、似たもの?

 

けど
私の手は勝手にそのスタンドを取ってた

 

裏側の小さなシール
──理玖が私とお揃いで貼ったシールが、そこにあった

 

頭の奥で
“カチッ”と音が鳴った気がした

 

…嘘でしょ…

 

手が震える
息が浅くなる

 

「紗奈?飲み物入ったよ〜」


「…あ、うん…ありがと…」

 

震えを悟られないように必死に笑顔を作る

 

まさか
まさか、瑠奈が…

でも──

現実は
残酷なほど静かに目の前に転がっていた

 

瑠奈の笑顔が、刺さる

理玖の優しさが、痛む

 

──私の居場所
ゆっくり壊れていく音がしてた