裏切りの罰 ー愛していたのは親友でー

誕生日の前日

 

私は、普段と何も変わらないフリで準備を進めていた

 

「紗奈〜明日楽しみだね!」
瑠奈がカフェで無邪気に笑う

 

「うん、すごく楽しみ」

 

私も笑い返す

 

「理玖も明日サプライズ用意してるって言ってたよ」
「へぇ…楽しみだなぁ」

 

──ほんと、よくそんな嘘をつけるね

 

内心は冷え切っていた

でも
明日はもう全部、終わる

 

 

決行当日

 

斗真先輩が手配してくれたレストランの個室
誕生日パーティーと称して
理玖と瑠奈を呼び出した

 

もちろん、二人は何も疑わず
嬉しそうにやってきた

 

「紗奈、誕生日おめでと〜!」

 

瑠奈が花束を差し出す

理玖も少し照れた顔でプレゼントを渡してきた

 

「お前が好きそうなやつ、頑張って選んだんだ」

 

私は笑顔で受け取る

 

「ありがとう、理玖、瑠奈」

 

しばらく普通に食事が進む

斗真先輩も少し離れた場所で静かに様子を見守っていた

 

そして──

 

食事が落ち着いたタイミングで
私はゆっくりと口を開く

 

「…実はね、私もサプライズ用意してたの」

 

理玖と瑠奈が顔を見合わせる

 

「え?紗奈が?なになに?」

 

私はスマホを操作して
用意していたモニターにデータを投影した

 

──理玖と瑠奈が寄り添って歩く写真
──ラブホテルの出入り映像
──削除されたはずの甘いLINE履歴
──耳を塞ぎたくなるほどの甘い囁きの音声

 

静かな個室に
証拠が次々と映し出される

 

理玖と瑠奈の顔が
みるみる青ざめていく

 

「……っ、な…なんで、こんなの…」

理玖が声を震わせた

 

瑠奈も顔面蒼白で言葉が出ない

 

私は静かに微笑んだまま、ただ一言

 

「…サプライズ、成功だね?」

 

理玖が慌てて立ち上がる

 

「ち、違うんだ紗奈!これは…!これは──」

 

「違わないよ」

 

私は遮った

 

「ずっと全部、見てたから」

 

理玖の喉がひくつく
瑠奈は今にも泣き出しそうな顔で俯いたままだった

 

「…お願い紗奈…違うの…私は……!」

瑠奈が泣きながら言葉を紡ぐ

 

「親友だったのに──」

 

私は淡々と告げた

 

「親友なら、もう少しまともに裏切ればよかったのに」

 

斗真先輩が静かに立ち上がり、私の横に寄る

 

理玖は斗真先輩に気付いて
今さら焦ったように目を見開いた

 

「と、斗真…お前……」

 

「残念だったな、理玖」

 

斗真先輩の低い声が、個室に静かに響いた

 

私は
斗真先輩の隣で最後に一言だけ残す

 

「さようなら」

 

 

──全てが、終わった