裏切りの罰 ー愛していたのは親友でー

理玖も
瑠奈も

 

まだ、自分たちがどれだけ無防備か
何も気付いていなかった

 

むしろ理玖は最近、少し余裕すら見せ始めていた

 

「紗奈、最近ずっと機嫌いいよな?」
「そうかな?」
「なんか安心するわ」

 

そうやって、理玖は私の頭を撫でて笑った

 

…何も知らずに、よくそんな手を伸ばせるね

 

私は柔らかく微笑み返しながら
その手のぬくもりを冷たく感じていた

 

 

瑠奈も同じだった

 

「紗奈〜! 誕生日もうすぐだね!楽しみだなあ」
「うん、楽しみ」

 

私の誕生日

 

──ちょうどあの日から一年

 

「私ね、サプライズ考えてるから期待してて!」
瑠奈がニコニコしながら言った

 

サプライズ、ね

 

(それは、私も──)

 

 

そしてその夜
私は斗真先輩に呼び出された

 

夜の静かな公園

私がベンチに座ると
斗真先輩は黙って隣に腰を下ろした

 

「…本当に大丈夫か?」

「はい」

 

斗真先輩はスマホの画面を見せてくる

 

そこには──

・ラブホテルの出入り映像
・復元した削除LINE
・密会中の写真
・録音された二人の甘い会話

 

全てが揃っていた

 

「……完璧です」

 

私が静かに呟くと
斗真先輩はわずかに息を吐いた

 

「……いよいよだな」

「……ええ」

 

「本当に…壊すんだな」

「はい。──綺麗に、確実に」

 

斗真先輩は黙ったまま
しばらく夜空を見上げていた

 

そして
ゆっくりと私の手を取った

 

「…あのさ…全部終わったらさ。俺のとこにこいよ」



私は小さく笑った

「え?それって甘えてもいいよーってこと?」


斗真先輩は静かに真っ直ぐ私を見た

「はは…まそうだな。お前のこと前から好きだったから。頼ってもらえて嬉しい。」

その言葉が素直に嬉しかった

今回のことでも
私のためにたくさん動いてくれた先輩。

先輩の優しさに救われた。

いいのかな、わたし

先輩と居たいと思っている自分がいる。

「全部終わったら…その時は、たくさん甘えさせてください」

 

斗真先輩の手が
少しだけ強く、私の指を握り返した

 
「当たり前だ。」
 



──全て整った
もう引き返さない