「純玲ちゃん…その話は…少し考えさせてほしいの。」
純玲は眉をひそめて楓を睨んだ。
「お姉様、まさか自分がお見合いに行こうなんて考えているの!お姉様に十条家が釣り合うわけないじゃない。」
「純玲ちゃん…ごめんなさい。この話だけは…譲りたくないの。」
純玲は激怒した鬼のような顔で楓に大きな声をあげた。
「いいわ…せいぜい恥をかくことね。来週の日曜日11時に帝都ホテルに来てちょうだい。そこで話ははっきりさせるわ…あっでも、あんまりみすぼらしい服装で来ないでね!」
純玲は楓に言葉を投げつけると踵を返してつかつかと去って行くのだった。
小さい頃からなんでも純玲に譲って来た楓だったが、この話だけは譲れなかった。
十条家のあっくんからお見合いの話なんて、楓にとってまさに青天の霹靂だ。
(…まさか…あっくん…昔の約束覚えていてくれたの…それとも…)
楓は喜びと同時に大きな不安も感じていた。
純玲が言っていたように、可愛い純玲と間違えているのではないか、それにお見合いに来ていく服なんて持っていない。
恐らく実家でも用意はしてくれないだろう。



