国光氏は逃げるような速足で部屋を出てしまった。
それに続けて純玲も立ち上がったが、楓の方に振り返った。
「あんたが私より幸せになるなんて許さないからね!」
純玲は鬼のような表情で部屋を後にした。
純玲たちが出て行った後、部屋の中にはあっくんと楓が残っていた。
「あっくん…いいや十条専務、あんな事を言って大丈夫だったのですか?」
「大丈夫だよ。国光は純玲になにか弱味を握られているようだったが、こちらも今回の脅しを公表すると言ったら、かなり焦っていたようだしな。」
「会話を録音していたのですか?」
「してないよ…ただのはったりだ!」
あっくんは、ハッハッと大きな声をあげて笑った。
驚いたことに録音したと見せた物はただの万年筆だったようだ。
まるで録音機能のあるペン型の物のように見せていただけだったのだ。
あっくんは何か思いついたように話し始めた。
「楓、今日は仕事が終わったら一緒に帰ろう。」



