「おはよう楓、昨日はよく眠れたかい?」
楓はまだ寝起きのぼんやりした頭で部屋を出た時、あっくんに声を掛けられた。
「あ…あの…申し訳ございません、こんな格好で…」
気づけば楓はまだパジャマのままだった。
昨日は寝てしまった事に朝方気が付いてパジャマに着替えたのだ。
あっくんの家に来るときに取り合えず必要なものは持ってきていた。
当然パジャマなど必要なものは用意している。
あっくんは楓に笑顔を向けた。
「楓、自分の家だと思って気にしないでくれ。俺は楓の可愛いパジャマ姿を見ることが出来て嬉しいけどな。」
「あっくん、揶揄わないでください。」
着替えをするために部屋に戻った楓は、顔が真っ赤になっていた。
昨日は事件があったためバタバタしていてあまり考えていなかったが、あっくんと一緒の家に暮らすことになる。
考えるとなんだか急に恥ずかしくなって来る。
着替えを済ませて部屋を出ると、あっくんはもう仕事へと行く準備を終えていた。
スーツに着替えて、髪をセットしたあっくんはまさに皆の憧れる十条専務だ。
「楓、朝食は簡単なものだが作ってある。よかったら食べてくれ、それと家の鍵はリビングに置いてあるから出るときに閉めてくれ。悪いが俺はもう出かけるから、後はよろしく頼む。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「行ってくる。」
もう一度笑顔をつくったあっくんは楓に手を振るようにして歩き出した。



