「残念だけどこれは恐らく君の妹や継母の指示だろうな。」
「どうしてこんな酷い事までするのでしょうか。純玲はあっくんがそんなにも好きだったというの。」
あっくんはゆっくりと首を左右に振った。
「きっと彼女は俺を好きなのでは無くて、十条不動産の息子という名前が好きなのだろう。」
その後、やはりこの部屋にいては危険だということになり、一旦あっくんの家に避難することになった。
あっくんのマンションは都内のいわゆる高級住宅地にある。
楓の職場にもすごく近い。
超高層まではいかないが、15階建てのマンション最上階だ。
「楓、暫くの間はここで生活してくれ、必要なものは後で言って欲しい。部屋はいくつか使っていない部屋があるから好きなところを使ってくれ。」
「あっくん、本当にありがとうございます。お世話になります。」
楓は姿勢を正してあっくんに深々とお辞儀をした。
するとあっくんがぽつりと独り言を言ったのだ。
「楓は昔とまったく変わらないな。」
「えっ…なにか言いましたか?」
「なんでもないよ。」



