篤志が居なくなりもう20年が過ぎていた。


楓は大学を卒業するとすぐに家を出て一人暮らしを始めた。
家族から早く離れたかったのだ。

就職は小さな不動産会社。
会社は小さいけれど社長をはじめ皆が仲良くとても居心地の良い会社だった。

楓はそこで営業事務として働いている。

「小柳さん、見積もりはもう出来ている?」

「はい、もう用意は出来ていますよ。」

いつも通りの日常。
楓は今の生活やこの会社が気に入っていた。
ずっとこの幸せが続けば良いと思っていた。


しかしこの後、社長が外出から戻ると空気が一変する。

社長はなぜかいつもの笑顔が無く、重苦しい雰囲気を纏って皆を見た。


「…悪いが、ちょっと集まってくれないか。」