あっくんは楓を真っすぐに見て真面目な表情をした。
「楓、俺は確かに今まで言い寄って来る女の子もいたし、面倒なので付き合った女の子もいた。でも、いつも思い出すのは君の笑顔だったんだ。小さい頃から俺の後を一生懸命に追いかけて来る女の子。妹のように思っていたけど、いつしか君のことばかり考えるようになっていたよ。幼い俺は君を守るという名目でお嫁さんにするなんて言ったこともあったな。」
「十条専務…あの…」
「仕事の時以外は小さい頃のように“あっくん”でいいよ。十条専務はなんか堅苦しいしな。」
楓は少し恥ずかしそうに下を見ながら小さな声をだした。
「本当に…私なんかで…いいのですか…」
下を向いている楓の頭にあっくんの優しい声が聞こえて来た。
「楓、僕は君じゃなくてはダメなんだ。…楓の返事を聞かせてくれる?強引に進めたけど楓が嫌なら、俺は男らしく諦めるよ。」
楓は恐るおそるあっくんの顔を見た。
楓の目には優しい表情のあっくんが見える。
「私は…ずっと、あっくんが大好きでした。…だから…私も、あっくんと一緒に居たいです。」
楓の言葉を聞いて、表情をさらに緩めるあっくん。
「よかったぁ~楓に断られたらどうしようかと内心ドキドキだったんだよ。」
楓は不思議そうな表情を見せた。
「…あっくんでも、どうしようかとドキドキするのですか?」
「あたりまえだろ!好きな女の子に振られたらどうしようと誰でもドキドキするだろ?俺を何だと思っているんだ。」
すこしお道化て怒ったふりをするあっくん。
それを見た楓は笑顔を見せた。
「やっと笑顔を見せてくれたね。これからはもっと楓を笑顔にしたいな。」



