純玲の声を聞いて楓は後ろを振り向こうとした。
しかし、あっくんは楓の耳元で囁いた。
「楓、大丈夫だから振り向かないでいいよ。これからは俺が楓を守るから。」
楓はあっくんの言葉に戸惑いながらも、そのまま振り返らず部屋を出たのだった。
楓は手足が震えていた。
あっくんはそっと楓の肩に手を置くいて微笑んだ。
「疲れただろ、なにか美味しいものでも食べに行こう。」
・・・・・・・・・・
ここはホテルの中にあるイタリアンのお店だ。
このお店はあっくんの顔なじみのようで、何も言わなくても個室を用意して案内してくれたのだ。
「フレンチは堅苦しいから、イタリアンの店にしたけど…良かったかな?」
「はい、イタリアンは大好きです。」
楓の返事を聞くとあっくんは慣れた様子でオーダーを始めた。
その様子を見て、楓は少しだけあっくんとの距離を感じてしまう。
「…十条専務は…こういうホテルのレストランは…よくいらっしゃるのですか?」
「あぁ、仕事で使う事が多いかな。」
「そ…そうですよね…仕事ですよね。」
楓が何か少し元気がない表情をしたので、あっくんは楓の顔を覗き込むように見た。
「もしかして…楓は俺が女の人と来ていると思ったの?」
「そ…そんなこと…思いません…よ。」
あっくんはいきなりケラケラと楽しそうに笑い出した。
「楓が焼きもちを妬いてくれてくれるなんて、なんだか嬉しいな。」
「ち、ち、違いますよ!!」



