すると、純玲は両手で顔を覆い、突然大きな泣き声をあげた。
「酷いわ…私は篤志さんをずっとお慕いしておりました。篤志さんに認められたくて、お稽古事も頑張ったのに…わたしのどこがお姉様に劣ると言うのですか!!」
あっくんは純玲に向かって表情をいっさい変えずに話し出した。
「純玲さん、私は幼い頃から貴女と親しくした覚えはありません。貴女はいつも姉である楓さんを虐めていたではないですか。噓泣きも大概にして欲しいものですね。」
純玲はさらに大きな泣き声をあげるのだった。
「嘘泣きなんて…ひどい!!」
するとあっくんは何か思いついたように小さくフッと笑うと、もう一度純玲の方を見て微笑んだ。
「純玲さん、すこし言い過ぎてしまったようで申し訳ない。貴女の美しい顔がみたいのでどうか機嫌を直してこちらを見てくれませんか。」
純玲はあっくんの言葉が嬉しかったのか、すぐに覆っていた手を顔から離してあっくんの方を見て頬を赤くした。
「そんな…美しいだなんて、恥ずかしいですわ。」
あっくんは純玲を見て微笑んだ表情を一変させた。
「純玲さん、やはり涙は出ていなかったようですね。」
純玲はあっくんの言葉に唇を噛んで悔しそうな表情をした。
「私は楓さんと話がしたいので、ここからは二人にしてもらえませんか。今日はお顔合わせということで、ご挨拶はまた改めてさせて頂きます。」
あっくんが立ち上がると、ご両親も一緒に立ち上がった。
継母は引き留めたくて大きな声をあげる。
「待ってください。もう一度考え直して貰えませんか!」
あっくんの父親が継母たちの方を向いた。
「もうお話することはなさそうですね。篤志もいい大人だ、本人が決めたことに私達は反対はしないことにしている。」
ご両親は皆に一礼すると部屋から出て行ってしまった。
あっくんは楓に向かって笑顔を見せた。
「楓、場所を変えて話をしよう。」
あっくんは立ち上がり楓の手を取ると、呆然とする継母をよそにそのまま部屋を出ようと歩き出した。
すると後ろから純玲の叫ぶような声が聞こえて来た。
「私はお姉様に絶対負けませんから!!」



