ドアが開くと中の皆は揃って驚いた表情を見せた。
継母はすぐに楓を鋭い眼差しで見て小さく舌打ちしたようだ。
先に声を出したのは妹の純玲だ。
「お姉様!どうしたのですかその姿は!」
あっくんは驚く楓の家族に向かって微笑んだ。
「楓さんを少しお借りしていたので、遅くなり申し訳ございません。」
楓の家族は皆驚きで言葉が見つからないようだ。
先程までビジネススーツを着ていた楓が豪華なワンピースドレスで現れたのだから当然だろう。
すると、あっくんの母親は楓を見て微笑んだ。
「あらまぁ、篤志が一生懸命になるのがわかるわね。とても可愛いお嬢さんだわ。」
あっくんと楓が席に着くと、あっくんのお父さんが口を開いた。
「今回はうちの愚息が無理を言い、急な話で申し訳ない。一度言い出すと聞かない子でね…。」
すると楓の継母があっくんの父親の言葉を遮るように声をあげた。
「あの…今回は長女の楓にお見合いの話を頂きましたが、妹の純玲の間違えではないでしょうか?」
継母の言葉にあっくんの両親はお互いに顔を見合わせて眉をひそめた。
あっくんは継母を真っすぐに見た。
「間違えはありません。僕は楓さんとのお見合いをお願いしました。」
しかし継母はまだ諦めていない。
「こんなことは言いたくありませんが、妹の純玲の方が器量も良いですし、茶道や華道も嗜んでおります。どこに出しても恥ずかしくない娘です。しかし楓は何をやらせても冴えない娘なので十条様の家には相応しくないですよ。」
純玲は継母の話を聞きながら頬を赤くして嬉しそうに頷いている。
あっくんは純玲と継母に向かって厳しい表情をした。
「あなた達は大切な自分の家族を、なぜ悪く言うのですか。最低ですね。僕は楓さんの方が内面も外面も美しく思います。」



