ハイスぺ幼馴染が約束を守ってくれるって本当⁉

「十条専務…あの…どこへ向かっているのですか!?」

楓は驚いて大きな声を出した。
するとあっくんこと十条専務は微笑んで楓を見た。

「楓、気づくのが遅くなって悪かったな。これから楓に魔法をかけてやる。」

少し悪戯な表情を浮かべたあっくん。

「じ…十条専務は、いつから私が楓だと気づいていたのですか?」

するとあっくんは急に立ち止まり、楓の顔を覗き込んだ。

「俺を誰だと思っているんだ。楓のことはずっと前から分かっていたよ。買収の話が出た時は焦ったが他の会社に取られないよう手を回して、ぎりぎり間に合ったんだ。」

「では…なぜもっと早くに会いに来てくれなかったのですか…もう会えないと思っていました。」

あっくんは申し訳なさそうな表情をする。

「もっと早く会いたかった…ただ、仕事も落ち着いて自分に自信が持てるようになってから、楓を迎えに行きたかったんだ。しかし、今回楓の勤める会社をうちが買収することになって同じ会社になる。そうすると、とやかく言う奴も出て来るから強引にお見合いを進めてもらったんだ。急で悪かったな…楓。」

あっくんに連れられてホテルの中を歩き進めると、目の前に“衣装室”と書かれた部屋の前に着いた。

すると私達がドアを開ける前に、中から女性が出て来て笑顔を向けた。

「十条様、お待ちしておりました。どうぞ中にお入りください。」

衣装室の中に入ると、そこにはすでに美しい振袖やミモザ丈のドレスが用意されていた。
先程あっくんが電話していたのはこの用意を依頼していたことが分かった。

あっくんはその衣装の前に立ち何かを考えているようだ。

「楓の振り袖姿も見たいが…ドレスも可愛いな…うん、ドレスにしよう。」

あっくんが衣装室の女性に何かを伝えると、女性は微笑みながら楓の方を向いた。

「では、こちらで試着をしてみましょう。」

楓は何が起こっているのか良く理解できないが、衣装室の女性に促されて試着室へと向かった。

用意されていたドレスは白いレースに沢山のビーズで刺繍がされていて美しいが華美過ぎず、上品で可憐なイメージだった。
とても楓には似合っている。