チャイムが鳴った。
教室の喧騒が、少しずつ散っていく。
誰かが「じゃーな」と言い、誰かが「あれマジで彼女?」と笑って出ていった。
気配がまばらになっても、レオくんは動かなかった。

私も立ち上がろうとする。が、手首を掴まれた。


「……え?」

「サボれよ」


静かに、けれど有無を言わせない声だった。
振り返ると、レオくんの目がじっとこちらを見ていた。
いつもの余裕の笑みはない。けど、どこか期待するような、試すような色があった。


「……俺とまだ、一緒にいたいよな?」


一瞬、何かが胸を締め付ける。
頷いてしまえば、きっと、いけない。
でも。

私は、頷いた。


「……うん」


レオくんは満足そうに笑った。


「ヨリ、……ごめんな?こんなとこ連れてきて。でもさ、見せたかったんだよ。俺の可愛いヨリを、あいつらに」


私の名前を、彼の声が呼ぶ。それだけで、冷えていた体が少しだけ温まる気がした。
ふわ、と優しい手つきで髪を撫でられ、額にキスを落とされる。
まるで、さっきまで笑われていた私じゃないみたいに。