クズ彼氏の甘く危険な呪縛



――――――

泥と血が染みついて、足取りが重い。
歩くたびに休みたいと思う。

でも、俺の帰る場所は決まってるから。

鍵は開いてた。
不用心……なんて笑いながら、音を立ててドアを開けると、ソファにうずくまっていたヨリが振り返る。
目は真っ赤で震えてる。


「帰った」


俺の姿を見た瞬間、その顔が凍った。


「……れ、お?え……っえ?な、なんで……え、待って……」


駆け寄ってくるヨリの足がもつれる。
それでも転びそうになりながら、俺の前にしゃがみ込むなり、泣きそうな声で叫んだ。


「血……!レオ、ちょっと待ってて、ね、待って、動かないで……!」


洗面所からタオルを引っ張ってきて、泣きながら、震えた手で傷を拭いてくる。


「……ごめん、なさい、私……なにが……っ、どこが痛いの?わかんない……ごめん、ごめんね……」


涙混じりの声。何があったのか知らないくせに、真っ先に自分を責めてる。
でも、俺の顔を撫でる指は、ちゃんと優しい。
それがヨリらしいんだ。俺を一番にしてくれる――あいつなりのやり方で。

ぽたぽたと、涙が零れてヨリの顔を濡らす。
涙で湿ったタオルが傷口に染みる。
それを見てまたヨリは嗚咽を漏らす。

その様子を、俺はじっと見ていた。