クズ彼氏の甘く危険な呪縛

「……おせぇ」

「うん……ごめんね」

「馬鹿だろ……」

呆れたような声が頭の上に落ちてきた。
うん、と声には出さずに頷く。

「レオがいないと、嫌だよ」

涙で濡れた声で言えば、痛いくらいに抱きしめられた、その時。


「……ヨリ?」


後ろから震えた声が聞こえた。

振り向けばそこにいたのは、

「お母さん……」

息を切らして、危うげに立っていた。

「ヨリ、私……あの」

「……うん」

家族とは思えないほどぎこちない会話。
久しぶりに見たお母さんは、細く小さかった。

「も、戻らないの?」

「……ごめんね。私はレオのそばにいたい」

「式が終わってからでも、いいんじゃない……?」

「違うの、お母さん。私ね……」