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校舎内は浮足立っていた。

クラスメイトたちが先生と写真を撮ったり、友達同士で笑い合っているその光景が目に入る。
その中にはレオの取り巻きの男子生徒たちや、いつかのとき巻き込んでしまった彼がいた。
目が合った瞬間、避けられてしまったけど、それでも元気そうでよかったと思う。

……けど、レオくんだけはいくら探しても見つからなかった。

何度かメッセージを送ろうとして、やめた。
気分屋の彼のことだから、もしかしたら……私なんてもう必要なくなってしまったのかもしれない。

不意に、そんな考えが頭をよぎって、胸の奥がずきんと疼く。

でも、それを認めたら、何かが壊れてしまいそうで――
汗ばんだ手でスマホをぎゅっと握って、目を伏せる。

私は――……。

「ね、ヨリちゃん、だったよね?」

不意に肩を叩かれて顔を上げると、隣のクラスの女の子が微笑んでいた。
名前は、思い出せないけど……何度か話したことのある子だ。

「よかったら、このあと一緒に写真撮らない? クラス違うけど、せっかくだし」

「……うん、ありがとう」

そんな風に話しかけられるのが、なんだか不思議だった。
普通の会話。普通の卒業生みたいな自分。
「高校生最後の日」らしい空気が、教室の中を満たしていた。

――もしかしたら、これが“普通”ってやつなのかもしれない。