クズ彼氏の甘く危険な呪縛

騒動から数時間が経っていた。
一方的な暴行を受けていた、男子生徒たちは保健室や病院に運ばれ、先生たちの怒号も今は聞こえない。
レオくんは、長い事情聴取を終えたばかりだった。

ドアの外で待っていた私は、先生に促されて、彼のもとへ向かう。

中に入ると、椅子にぐったりと座ったレオくんが顔を上げた。


「……やっと来た」


蒼白の顔、制服は着替えたはずなのに、手はまだばんそうこうだらけで赤黒い。


「レオくん、手……見せて」


私はそっと彼の前に膝をついた。

無言のまま、レオくんは拳を差し出す。
腫れて、擦れて、皮がむける指先を、私はそっとハンカチで拭いた。


「痛く、ない?」

「ヨリが触ってると、痛くねえ」


冗談めかして笑った声に、私は目を伏せた。
少しでも痛まないようにと、丁寧に拭きながら、小さくため息をつく。


「……なにがあったの?」

「……」


レオくんは答えてくれなかった。
けれど、その沈黙が答えだった。


やがて、レオくんが私の肩に、そっと頭を預けてくる。


「疲れた」


また、その言葉。
さっきの、空き教室で言ったのと、全く同じ声で。

私は何も言えず、そっと腕に手を置いた。