きっとあれは、悪ふざけでしかなかった。
質の悪いグループの暇つぶし。

でも、その瞬間の私はそれでもよかった。

家にも居場所はなくて、学校でも透明人間みたいな私にとって、
あの手軽な言葉は、救いのように思えた。


「……うん」


そう答えた自分の声が、誰か別の人みたいだった。
周りにいたクラスメイトがひそひそと話し出す。
知らない誰かがスマホを取り出した。


「やり~」


楽しそうに言い、背後に向けてピースサインをするレオくんは、私には救済に見えてしまった。
じんわりと心が満たされていくのを感じた。